小嶌 久美子さんに話を聞きました。コワーキングスペースの研究をしたり、東京と京都の二拠点生活したり、旅館のリブランディングをしたり、お坊さんの法話の研修の講師をしたり、一言では語れない小嶌さん。
忙しい毎日に、足を止めて、「大事なことってなんだろう」って考えたくなるインタヴューになりました。
1983年京都生まれ、横浜&イギリス育ち。東京・京都の二拠点生活者。各種新規事業や行政の施策策定のリサーチや企画、プロジェクトマネジメントを行う。大学院は都市交通研。人の動線や興味関心の動きを視るのが好き。一次情報から考えることが好き。インタビューが好き。街歩きが好き。
1987年埼玉県生まれ。The U 編集長。イラストレーター。1月15日から原宿の「ビオ オジヤン カフェ」で個展やってます。1年半海外を旅してた。
お金はお互いへの応援
マスダ
おそらく、すべての仕事にお金が発生するわけじゃないですよね。
小嶌
そう、すべての仕事にお金が発生するわけじゃないですね。でも、本当のお仕事になりそうだったら、お金を提示するし、そこで関係が切れることもあるし、切れないで「お願いします」って言う人もいる。
ただ、お金にすごいフォーカスしなくてもいいんじゃないかあなって。どっちかと言うと、信じられる人間関係を築くこととか、選んだ人に対してどれだけ義理人情を感じることをできるかとか、逆に恩をかけたいってことが、自分の人生を豊かにしていくんじゃなあって、わたしは思いますね。
マスダ
お金に対して思ってることはありますか?
小嶌
「400万円ありながら、なんでお金もらって仕事してるの?」っ聞かれたら、それのほうが、おもしろいってだけかなあ。お金が発生したほうが、緊張感が生まれるし、モチベーションにもなるし、あと勉強になる部分も多い。
お金をもらうとか、払うって言うのは悪いことじゃなくて、「この子の花だから買いたい」って思って花を買うし、「この人のお店だからお金を落としたい」って思ったりするから、お互いに対しての応援なのかなって。
マスダ
応援する気持ちがお金って見えるカタチになっただけ。
小嶌
お金じゃなくてもいいんですけどね。
自分の身銭切ってでもやりはじめる
マスダ
コワーキングスペースの話についても聞きたいんですけど、研究ってどんなことをやってるんですか?
小嶌
「400万円プロジェクト」をやってるんだから、「自分がやりたいからやる」っていうような自分が主語になるようなことも1個つくろうと思って。
この場所で働きはじめたときに、今まで働いていたオフィスとぜんぜん違って、おもしろいなあって。今までは四角い机がいっぱい置いてあって、椅子が同じ方を向いているようなところでしか働いたことがなかったので、こっちのコーワキングスペースのほうが仕事がはかどるし、人間関係もよくなるし、人も呼びたくなる。
「あっ、こんな場所あったんだ」って思いはじめたときに、ニューヨークに行って。ニューヨークが4回目くらいだったので、ベタなところは行く必要がなかったから、「コワーキングスペース巡りしよう」って思い立って。
周る前の晩に、バッとコーワキングスペースを調べて、アポなしで6ヶ所周って。6ヶ所周ったときに、コワーキングスペースって、めちゃめちゃおもしろいなあって。それが3年前。
これは絶対ネタになると思って、本にするために、アポをとった上で2年前にコワーキングスペース18ヶ所を取材しました。
マスダ
「ああ、これは本になるぞ」って。
小嶌
18ヶ所取材する前に出版社にかけあったんだけど、執筆実績がないからぜんぜん相手にしてくれなくて。そのあと18ヶ所回ったあとに、WEBの記事書いたりとか、「世界コワーキング探訪」っていう講演会をやっていたら、出版社のほうから「本を出しませんか?」って依頼が来て。
マスダ
相手にしてもらえなかったのに、発信をしていたら。
小嶌
だから投資なんですよね。400万円っていうお金は消費じゃなくて、投資だったんだなあって。400万円を食事やエステ、観光に使ってもいいんだけど、400万円を好きなように使っていいって言われたときに、コワーキングスペースを取材する旅行をしようと思った。
やったら、そのネタをもとに講演会をやったり、WEBの記事で執筆料をもらったり、本の出版をもちかけてもらったり、結局仕事に繋がってるんですよね。
自分の興味のあることや、強烈におもしろいって思ったことって、人からお金をもらってからはじめるんじゃなくて、自分の身銭切ってでもやりはじめるっていうのが重要。
人からお金をもらったものって、お金をくれた人の力の原理が働くから、想像の範疇をあんまり越えないくて。クライアントワークとしてはいいんだけど、でも新しい時代をつくるとか、新しいことをやるってときは、自分のお金を使ってやったほうが、もっとおもしろいことが起きるんじゃないかなあって。
マスダ
ああ、わかります。以前勤めていた団体では、自腹でやっていたプロジェクトもあります。自腹でもやりたいか、自腹だとやりたくないかって、ひとつの基準になりますね。
投資になるか、消費になるか、正直わからない部分もありますよね。結果、投資になることもあるから、はじまりは消費でもいいとぼくは思います。
小嶌
そうですね。でも、使う人の意識なんじゃないですか?「ブランドバックがほしい」って言って、自己満足でブランドバッグを買うのと、「このブランドバックをもっていたほうが格が上に見られるし、仕事の話も進みやすいだろうな」って、ブランドバッグを買う人もいるから、同じ持ち物であっても、持っている人の意識によって違う使われ方になるから、消費になるか投資になるかは、その人の教養の差なんじゃないかなあって思っちゃう。
マスダ
なるほどー。ぼくは、すべてのものが投資になると息苦しく感じます。ムダって思えるような、くだらない消費もあっていいなあって。
小嶌
うんうん。あと、おいしいものを食べたいっていうのは根源的な欲求だけど、パパ活で「2〜3万円のおいしいものを、おじさまからご馳走してもらった。ラッキー」って言うのは、その時間ムダだなあって思うから、2〜3万円のコースを奢ってもらえるとしても、わたしはムダな人とは絶対食事したくない。
だって食事は食事だし。それをするんだったら、自分のことを特別扱いしてもらいたいような方と、行きたいなあって思う。
マスダ
時間とか人のほうが大事ってことですよね。
小嶌
そう、お金は戻ってくるかもしれないけど、時間って戻ってこないし。
マスダ
ああ、そうですね、お金はやろうと思えば手に入りますもんね。
小嶌
自分の時間の過ごし方が大事。
マスダ
時間、どうやって使ってますか?3つ掛け持ちしてたら時間なくないですか?
小嶌
今は3つやってないです。
ミクロにするとコワーキングスペース、マクロにすると都市
マスダ
はじめにも聞きましたが、今は何やってるんですか?
小嶌
本を書いていて。あとは、京都近くの大津の観光振興課さんと旅館さんのリブランディングのプロジェクトをやってます。
あとは、都市の見え方について情報収集するのがすごい好きで、そのイベントをやろうと思っていて。このあとは都市をテーマにした雑誌を編集・出版している人にアポをとっていて。都市とか街とか、人の集まる場所をどういう風にコーディネーションするのか、おもしろくつくれるのか。世の中にメッセージ性のあるカタチで届けたいから、今はそれを探ってますね。
マスダ
都市をつくっていくことに。
小嶌
都市をつくると言うか、もともと大学院の専攻が土木の都市研究室で。コワーキングスペースの何にわたしが興味あるかとい言うと、コワーキングスペースも一種のシムシティーで。シムシティーってわかります?
マスダ
都市をつくるゲームですか。
小嶌
うん、いろんな業種の人たちがいる中で、どういう会議室をつくるのか、どう座席を配置するか、どこにキッチンを置くか、ハード面の工夫や、どんなイベントを開催するか、どういう風に人をつなげていくかっていうソフトの面の設計によって、利用する人同士の関係性が変わるから、シムシティーみたいに工夫のバリエーションがあるなあって。
それって、ミクロにするとコワーキングスペースで、マクロにすると都市になるなあって思っていて。
マスダ
ああ、そこでつながってるんですね。
小嶌
逆の方向で思うのが、これからテクノロジーが普及するにつれて、人って家から出なくても暮らしていけるんだろうなあって。家の中にいても買い物できるし、テレビ電話で会えるから家から出る必要ないってなったときに、それでも「家から出たほうがおもしろい」とか、「こんなことがあるから、やっぱりお出かけしたくなるよね」っていうような場所をあえてつくり出していくのは、おもろいだろうなあって思う。
マスダ
便利な世の中になるからこそ。
小嶌
だからこそ、わざわざ外に出たくなるようなことをつくっていきたいんですよね。
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