インタヴューの相手は、千田 翔太郎さん。子どもの頃からエンタメに人生を変えられてきた経験から、今は人の人生を変えるようなエンタメをつくる側へ。
「VRが日常になるのは間違いない」と語る千田さんに、VRのおもしろさについて、現在制作中のコンテンツ『東京クロノス』について、話を聞きました。
前編、後編に分けてお届します。前編です。
千田 翔太郎1993年岩手県生まれ。MyDearest株式会社のCo-Founder, COO。
マスダ ヒロシ1987年埼玉県生まれ。The U 編集長。イラストレーター。1月中旬から原宿の「ビオ オジヤン カフェ」で個展やります。1年半海外を旅してた。
海外のアニメエキスポ
マスダ
はじめまして、よろしくお願いします。
千田
よろしくお願いします。ぼくから質問していいですか?
マスダ
はい、もちろん。
千田
世界を旅をしているときは、なにをやっていたんですか?
マスダ
遊んでいただけです(笑)。道端でお金をもらいながら似顔絵を描いていましたが、これも遊びですね。
その場、その場で行くところを決めていたので、アメリカのワシントンD.C.ではコスプレをしている人がたくさん歩いていてて、ついていったら「Otakon(オタクのための祭典)」をやってて。中に入ったらすごい賑わいで、お客さんの消費がクリエイティブなコンテンツをつくってるんだってことがわかりました。
千田さんは、「Anime NYC 2018」に出展されたんですよね。どうでしたか?
千田
ニューヨーク以外にも、何度かアニメエキスポに参加しましたが、カップル、家族でコスプレしてる人も多くて、オープンに楽しんでいました。
日本人だったらお腹が出てたら、気にしてお腹を隠したりしますが、アメリカ人は、ぜんぜん関係なくて「おれはこれがやりたいんだ」って感じですね。
マスダ
たしかに、アメリカは太ってる人でも、まわりを気にせずピッチピチの衣装を着てたのしんでいて、それがいいですよね。
出展の反応はどうでしたか?
千田
めちゃくちゃ大人気でした。アメリカでは、「Visual Novel」という分野が人気になってきてるのもあり、列が途切れないくらい好評でした。それと、自分の意見を言ってくれる人は多かったですね。
アメリカでは、おもしろいインディーゲーム(個人や小規模の開発チームでつくられたゲーム)の制作者は、ロックスターのような扱いなんです。リスペクトもありました。
マスダ
すごいですね。では、今日はロックスターにインタヴューさせていただく気持ちでやります(笑)。
エンタメは人生を変えるチカラがある
マスダ
あらためて、千田さんがやっていることを教えてください。
千田
今はテクノロジーとエンタメのチカラで、人の感情をマイナスからプラスに変え、現実世界での行動の導線を作りたい。そんな思いからVR(Virtual Reality 仮想現実)のコンテンツをつくってます。
つくっているのは、ライトノベル、マンガ、アドベンチャーゲームと、ストーリーのあるものです。僕はその中で、事業戦略の立案・実行を行なっています。まあ要するに、ビジネス側の最前線で何でもやってます(笑)。
マスダ
もともと、エンタメやコンテンツに興味があったんですか?
千田
はい。ひたすらエンタメに人生を変えられてきたので。マンガの『SLAM SUNK(スラムダンク)』を読んでバスケットを好きになって、そこから友達が一気に増えたり。マンガの『ドラゴン桜』を読んで、勉強をするようになったり。親に「勉強しなさい」って、いくら言われても「うるせえ!」としか言ってなかったのに(笑)。エンタメやコンテンツって人生を変えるチカラがありますよね。
マスダ
親からの「勉強しなさい」って、子どもはいちばん勉強しないですよね(笑)。
そのなかでもVRに?
千田
VRは共感型のメディアなんです。周りの人の息遣いや視線、体の向き、置いてある物などそういったものから「雰囲気」が生まれるので、現実と同じ視野のVRでは、より臨場感や空気感が味わえる。そこから「共感」が生まれます。
『SLAM SUNK(スラムダンク)』の山王戦を桜木(主人公)目線で体験できたら、バスケットをはじめる人が増えるはず。VRは、もっともっと行動を変えるきっかけになると思ったんです。
マスダ
VRとはどう出会ったんですか?
千田
もともとぼくはソフトバンク出身で、MyDearest代表の岸上はソフトバンクの同期なんです。
入社したときは550人くらい同期がいて、研修のクラス分けがありました。まわりがキラキラした人が多い中で、ぼくは群馬県出身で「やったやるぞ」って。
マスダ
群馬を背負ってるわけですね(笑)。
千田
ぼくのチーム、研修最終プレゼンは全体3位で「悔しいけどこれから天下とったる」って思ってた矢先に岸上のプレゼンを別の機会に見ました。なんというか熱狂者をつくるようなエモいプレゼンで僕にないものを持っていた。純粋にすごいなって。
で、その岸上に誘われる形で、VRのイベントに触れるようになりました。ぼくも『ソードアート・オンライン』が大好きだったので、秒で引き込まれました(笑)。
マスダ
『SLAM DUNK』を読んだ人がバスケットに興味をもつように、『ソードアート・オンライン』を観てたから、VRにはまったんですね。
千田
それで、2015年にVRの日本の開発者が集まる会に行ったのが大きなターニングポイントでした。開発者なので決して騒がしくはないのですが、フツフツとした静かな熱気を浴びたんです。今までみたどのイベントよりも参加者がイキイキしていて、何よりも皆ワクワクしてました。「そこで、VRゴーグルをはじめてかぶった(装着した)ときには、iPhoneに初めて触れたときの100倍感動しました。
マスダ
それで、VRのコンテンツをつくっていこうと思ったんですね?
千田
VRは確実に今の日常を変えると思いました。なので、僕らもつくりたい、と自然な感じですね。「Unity」ってゲームエンジンって知ってますか?
マスダ
名前だけですが、ゲームを開発するために使うものですよね。
千田
そうですね。これがVRコンテンツを作る上でも必須な開発エンジンなんですが、当時「Unitiy」の中の人に「つくり方教えてください」ってメールで長文を送って頼み込んだんです。そしたら、2〜3時間ぼくたちだけのために時間をつくって教えてくれて。今は忙しくて、絶対にそんなこと無理だと思いますが、、、本当にありがたかったです。
マスダ
飛び込んでみるもんですね。
千田
間違い無いです。それで玉転がしみたいなゲームを作って、それはめちゃくちゃ面白かった。何しろゲームを自分が作ったわけですから。ただ同時に、求める水準のVRコンテンツを自分達でつくろうと思ったら3年かかると絶望しました。なので、エンジニアを探しました(笑)。
そこから数ヶ月後に『学園青春VR』というデモをつくって、当時最大のVR開発者イベント「オキュフェス」に出してみたんです。
マスダ
『学園青春VR』ってどんな内容だったんですか?
千田
クラスにいる目立たない男子が、女子に「あなた、このままでいいの?」ってあおられるような物語で(笑)。「あんたの本当にやりたいことは何なの?」って聞かれた体験者に実際に叫んでもらうものでした。
マスダ
おもしろい、叫んでもらえるものなんですね。
千田
ダンボールで遮断した電話ボックスみたいな空間をつくって、実際には3人に1人くらいが叫んでくれました。「俺は○○やりたいんじゃ〜」って(笑)。
マスダ
いいですね(笑)。「あっ、おれはこれがやりたいんだ」って、その人の人生を変えたかも。
登場人物の一員になれるVR
マスダ
VRのハード面、ソフト面の特性を教えてもらえますか?
千田
ハードとソフトは表裏一体なので、分けて説明できないんですが、一般的には「安全圏から冒険できる」ってことですね。
マスダ
かっこいい。
千田
『ソードアート・オンライン』プロデューサー三木さんの言葉なんですけどね(笑)。安全に冒険できる、エンタメの到達点ですよね。
で、ぼくら的解釈だと、VRの特性は「共感」です。平面のメディアだと切り取られた面しか観られないけど、360度の世界では周りの雰囲気全体を感じとることができます。周りの人それぞれの表情ひとつでも、陽気な雰囲気になったり、重々しい雰囲気にもなります。
ミステリーのコンテンツだったら、空間に仕掛けをつくって、プレイヤーは能動的に選択できるおもしろさもありますね。
マスダ
VRの現状って、どんな感じですか?
千田
まだまだ個人の保有は少ないのが現状です。ただ、本格的なVRの体験できる「Oculus Go」が約24000円とVRのヘッドセット(本体)が一般の人でも手に入る値段になってきてます。
マスダ
VRって、どこまで広がるんでしょうか?
千田
ひとりにひとつ。スマホにとって変わります。
マスダ
えっ、スマホがなくなるんですか?
千田
スマホって重いし、小さいし不便じゃないですか。未来の人から見たら、「なんであんな小さいガラスをシュッシュ触ってるの?」ってなります(笑) スマホは小さいコンピューターですから、サイズだけ見ても限界があるんですよね。
箱型のVRゴーグルではなく、メガネ型、コンタクトレンズ型と小型化して、UIは現実の空間全てのスペースを使うようになります。今のスマホのようにテクノロジーがあまりに自然すぎて体の一部のようになるので、使ってる人が使ってると意識せずに、暮らしていると思います。これは、落合陽一さんの著書『魔法の世紀』にも書いてありますね。個人的には、早く脳とリンク可能になってほしい。。。
ただ、それがいつになるかはわかりません。何十年後かもしれないし、ほんの数年後かもしれません。
マスダ
映画『Ready Player One』のような世界が本当に来るんですね。あれは、2045年の世界でしたね。
そのときのために、準備をしているんですか?
千田
はい、VRが日常になるのは間違いないので、そのタイミングで勝負できるように準備しつつ、事業を進めています。今は、『東京クロノス』ですね。
今までのVRコンテンツって、ジェットコースターのような瞬間最大風速をコアバリューにしたものが多かったんですが、ぼくたちはストーリーのあるもので、長く楽しんでもらえるものをつくってます。
良い悪いではなく、別物ですね。『東京クロノス』でも、気づいたら登場人物の一員になっているかのような、物語を強く意識した体験を目指してます。
感想を送る/千田さんにエールを送る東京クロノス
「次のアドベンチャーゲームは画面の向こうだ」
クラウドファンディングで国内外1,662人から1800万円以上を集め話題沸騰中!
豪華スタッフキャストが送る、VRミステリーアドベンチャーゲーム。
「日本発、世界でヒットする作品」を目指し、ユーザー(制作共犯者)のみなさまとつくり、育て上げていきます。2019年初旬のリリースに向け、鋭意制作中です。
対応予定デバイスは、Oculus Go, HTC VIVE, Oculus Rift, PSVR。
twitter: https://twitter.com/tokyo_chronos
web: https://tokyochronos.com/index.html