「今は選択肢がなんでもある。あの頃のぼくにはカメラしかなかった」レスリー・キーさんの一言が耳にこびりついて、離れない。
レスリー・キーさんは、シンガポール出身の写真家。AKB48から安室奈美恵さん、ビヨンセさん、レディー・ガガさんまで、世界のアーティストやモデルを撮影してきた。
レスリーさんは、その人のいちばんの瞬間をいちばんの気持ちをこめて写真に収める。見たものは、そのチカラ強い写真に惹きつけられる。
レスリーさんがカメラを手にしたのは13歳のとき。中学生になるタイミングで母親がプレゼントしてくれたのだ。その4ヶ月後、とつぜん母親が亡くなってしまう。
母親のことは、いつか撮ろう撮ろうと思って、撮っていなかった。その後悔が、「いつも、今やらなければ」という気持ちにさせ、夢へのアクセルを踏む。その後、カメラで人と関わる人間になろうと、いろんな人の写真を撮るようになる。
その頃を思い出しながら、レスリーさんが言う。「今は選択肢がなんでもある。あの頃のぼくにはカメラしかなかった」と。そう、この一言が耳にこびりついて、離れない。
自分にはカメラしかないと思って夢中でやってきたからこそ、子どもの頃から憧れてきた松任谷由美さん“ユーミン”を撮影することになり、いろんな夢を叶えていったのだろう。
「The U」は、自由をつくることをミッションにしている。それは、つまり選択肢を広げることだ。でも、レスリーさんは、「今は選択肢がなんでもある」と言い、その言葉の裏には、選択肢がありすぎることの貧しさを指摘している。
選択肢があることは、いつでも逃げることができるということだ。これがダメなら、次はそれをやればいい。それがダメなら、次はまた違うことをやればいい。
逃げる場所があるということは、こころの余裕をつくることもできるけど、あきらめを早くすることにもなる。「The U」がつくりたい自由は、あきらめを早めることではない。じゃあ、どうしたらいいのだろう。
自分にはこれしかないと思って動き、ダメならダメで無限の可能性があると思って生きる、ってことなんじゃないだろうか。うーん、イメージしにくいって?じゃあ、きびしい父親とやさしい母親、両方を自分のなかにもつってのはどうだろう。
あきらめそうになったときにいつも「それでいいのか?」と聞いてくるきびしい父親と、つらいときに「ほんとうにダメなら逃げてもいいんだよ」と言ってくれるやさしい母親を、自分のこころのなかに置いておく。
あきらめやすい人は父親の成分多めで、追い込みすぎて精神を病みやすい人は母親の成分を多めで。ぼくはしばらく、「The U」しかない、この場をおもしろくするんだという、父親の成分多めでいきたい。今のあなたには、どっちの成分が必要ですか?
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