「巻きこんでいくの趣味なんで」と言えるように。

「巻きこんでいくの趣味なんで」と言えるように。

アートディレクターの千原徹也さんがナビゲーターを務めるラジオ、「NAMIKIBASHI CONNECTION」がはじまった。これから毎週金曜日22時からJ-WAVEで流れる。千原さんには「れもんらいふデザイン塾」でお世話になっているため、聴いていた。

「ときにはね、みなさん(リスナー)を巻きこみつつ。巻きこんでいくの趣味なんで。巻きこみ屋なんで。これからおもしろいことを企んでいくので、期待してください。よろしくお願いします」冒頭のあいさつ、開始5分に千原さんが言った。

「巻きこんでいくの趣味なんで」。今の自分には、言えないことばだ。人を巻きこむことを、ぼくは苦手としている。

はじめて勤めた会社でプランナーとして働いていたぼく。先輩に「この仕事、クリエイティブディレクターとして入ってもらえますか?」と聞いて、イヤそうな顔をされたら、「じゃあ、自分がやるんで、大丈夫です」なんて言っていた。かわいげのある後輩なら「そこをなんとか」なんて言ってるかもしれない。かわいげのないぼくでさえ「そこをなんとか」、1回くらいは言ってただろう。でも、それ以上いい気分にさせるようなことは言わなかった。

人に期待するより、自分に期待したほうが、コントロール可能。やらされている感じの人に熱を注ぐより、仕事に熱を注いだほうがいいものがつくれると思った。冷たい人間と思うかもしれない。いや、じっさい冷たいところがぼくにはある。

そんな無愛想な自分だけど、ひとりでやることへの限界を感じている。ひとりでやると、世の中を動かすような、ダイナミズムがないのだ。だからと言って、人が集まればなんかいいことがはじまるとは思わない。あらゆるプロジェクトは、取り憑かれるように考えた「ひとり」からはじまっている。

サザンのデビュー40周年となる2018年、千原さんは、サザンファンを公言するアーティストや著名人を招いた自主企画イベント『勝手にサザンDAY~みんなの熱い胸さわぎ2018~』を企てた。アーティストやファンを巻きこんで、みんなでサザンの歌だけを歌うというイベントを実際にやってのけた。さすが、自他共に認める「巻きこみ屋」だ。

きっと、「これ、おもしろいでしょ?」というアイデア(大義・思考)がはじめにあって、それを「これ、どうしてもやりたいんだ」と熱を燃やし続け、「これ、じっさいにやろうよ」と行動した(巻きこんだ)のだろう。

巻きこむことの手前には、「アイデア」と「熱」という前提がある。巻きこんだ人にプロジェクトという船に乗ってもらうためには、アイデアとなるコンパスと、熱となる燃料が必要だ。プロジェクトの大小によって船の大きさも異なる。

自分がそのプロジェクト(船)に乗るか乗らないかを考えたとき、いちばん大事なことは、船長(発起人)が信頼できるか、好きかどうか。信頼できない船長の船には乗りたくないはず。好きじゃないと、いっしょに時間を過ごしたいと思わないはず。逆に好きな人なら、それだけで船に乗ってしまうだろう。人に愛されるチャーミングな人はそれだけで、とてつもない才能なのだ。そういえば、赤ちゃんは、最強の巻きこみ屋だ。

人を巻きこんでいくためには、「アイデア」と「熱」と「信頼してもらえるだけの自分」が必要なんです。これはもう、コツコツと思考と行動を積み重ねるしかないね。

先週の「れもんらいふデザイン塾」のゲスト講師、遠山正道さんが「プロジェクトにおいては、3種類の人が存在します。『仕掛ける人』、『声がかかる人』、そして『どちらでもない人』」と言った。

今のあなたは、3種類のなかのどの人ですか?また、どの人になりたいですか?

読んでくれて、ありがとうございます。
これからいいなあと思った方には、ちょっとずつ声を掛けていくので、どうぞよろしくお願いしますね。

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マスダヒロシ
マスダヒロシ

The U 編集長/グラフィックデザイナー/イラストレーター 1987年埼玉県生まれ。2017年から1年半世界76カ国を旅をして、当たり前は時代と場所でひょいっと変わることを知る。イラストのご依頼お待ちしております。Instagram @hiroshimasud