ドイツには「Schadenfreude(シャーデンフロイデ)」という「他人の失敗をよろこぶ感情」ということばがあることを、ドイツ人の友だちが教えてくれた。Schadenが「損害」で、Freudeが「喜び」の意味で、ふたつをくっつけて「Schadenfreude(損害喜び)」。保険屋さんがあっと驚くようなことばだ。
たとえば、目の前で転んだ人をプププッと笑ってしまう気持ちだ。日本語と同じように英語にもこのことばがないらしく、「Schadenfreude」は英語のようにも使われているらしい。
他人の失敗を笑ってしまう感情は、きっとどんな人間のなかにもあるのだろう。ぼくがエチオピアを旅してたときは、バスのテレビでずっと「ドッキリ番組」が流されていた。急に爆弾をわたされてあたふたしたり、落とし穴で泥まみれになったり。ことばなんて関係なく、誰かがだまされたり失敗する姿はおもしろい。
でも、その感情が大きく膨らみすぎるのはあぶない。それは、失敗する人にとってというより、その人にとって。たとえば、サルが木から落ちるのを大笑いしながら「おい、あれ見ろよ。あいつ落ちてやがる」なんて言ってるうちに、木に登れなくなってしまう。もし、自分が木から落ちて笑われたらどうしよう、木に登らずに下から笑ってたほうがラクだ。
ぼくは、そんな風に行動しなくなることをおそれている。だから、まずサルが木から落ちたら、プッとすこし笑うかもしれないけど、「あいつは木に登ろうとしたんだ、かっこいいなあ」と考えたり、言うようにしてる。人工的に。そのほうが自分が木に登りやすいから。
「犬も歩けば棒に当たる」ということばの意味を調べてみると、2つの異なる意味がありました。
1 何かをしようとすれば、何かと災難に遭うことも多いというたとえ。
2 出歩けば思わぬ幸運に出会うことのたとえ。
1と思うか、2と思うかで、歩けなくもなるし、たくさん歩きたくもなる。
今日も読んでくれて、ありがとうございます。
わたしを自由にするのも不自由にするのもわたしよ。