バスキアというアメリカ人の画家をご存知ですか?彼は1960年12月22日にハイチ系アメリカ人の父とプエルトリコ人の母の間にニューヨーク・ブルックリンで生まれ、27歳の若さでこの世を去った。一見、落書きのようなイメージと詩のような言葉や記号をキャンパンの中にリズミカルに配置しているバスキア。
そんな彼は、“I am not a black artist, I am an artist.”「ぼくは黒人アーティストじゃない。ぼくはアーティストだ」という言葉を残している。ひとりのアーティストではなく、黒人アーティストとして見られることを嫌っていたのだ。
ちなみに、彼の展示「バスキア展 メイド・イン・ジャパン」が森アーツセンターギャラリーで11月17日までやっていて、ホームページで彼のことをこのように紹介している。
1980年代のアートシーンに、彗星のごとく現れたジャン=ミシェル・バスキア。
わずか10年の活動期間に、新たな具象表現的な要素を採り入れた3,000点を超すドローイン グと1,000点以上の絵画作品を残しました。その作品は、彼自身の短い人生を物語るかのように、非常に強烈なエネルギーであふれているだけでなく、20世紀のモダニズム美術の流れを踏まえ、ジャズやヒップホップ、アフリカの民俗や人種問題など、黒人画家ならではの主題を扱っています。そのため、没後ますます名声が上昇し、今や20世紀美術最大の巨匠の一人として確固たる地位を占めるにいたりました。
いやいや、「黒人画家」って、バスキア兄さんが「ぼくは黒人アーティストじゃない。ぼくはアーティストだ」って言葉残しているじゃないの。別にこの文章を書いた人を批判したいわけではないんですが、こういうことが無自覚に起きている。こういうこととは、本人が言われてイヤなことを、無自覚に言ってしまうというようなことだ。
少し前に、ガーナ生まれ日本育ちのフィービィさんがツイッターでこんなツイートをしていた。
この内容をツイートするべきく迷ったけど、なんか最近本当に多いから言わせていただきたい。
友達の紹介や、イベントで男性て仲良くなって、食事をたまにするんだけど、みんなではないけど80%の男性が俺、黒人フェチなんだと言う、、、— ふーちゃん (@iBfoNN9Ankg01On) 2019年11月3日
うちはそれをいつも聞くと、なぜそれを言う?思ってても言わないでほしい。。うちにとっては差別されてるようにしか見えない。うちはフィービィという人間を知ってほしい、好きになってほしい。。別にフェチを否定しているわけではない、、
— ふーちゃん (@iBfoNN9Ankg01On) 2019年11月3日
ただ人種的なフェチはどうかと思う、、うちが黒人じゃなきゃ、認めてくれないの?って思う!そうゆう人種で好き嫌いを決めるの本当にやめていただきたい。だって、うちがあなたが日本人だから好きって言われたらどう思う?いい気持ちではないと思うんだよね、、
— ふーちゃん (@iBfoNN9Ankg01On) 2019年11月3日
フィービィという人間を好きになってほしいです!(恋愛とか関係なく)
確かに人それぞれ魅力的に思う人種が
いるかもしれないけど、人種を見る前にまずその人の人間性を見てください笑、そうすれば人種で見なくなると思う!これはあくまでも私の意見です。以上!すっきりした笑— ふーちゃん (@iBfoNN9Ankg01On) 2019年11月3日
ぼくは、共感すると共に、自分も無自覚に人を傷つけているんじゃないかとこわくなった。
きっと、だれだって自分ではわかっているはずだ。アイデンティティーを切り取られるんじゃなくて、まるごとひとりの人間として見られたいって。
「主婦」としてのわたしではく、「有名企業で働く」オレではなく、「日本人」のぼくではなく、ひとりの人間として扱ってほしいと。
それにもかかわらず、他人のことになると、無自覚になって「元◯◯企業の◯◯さん」なんて言ったりする。もちろん、本人がイヤでなければ、それはかまわない。何かしらの特徴があることで人に覚えてもらえるし、それは人との差別化において武器にもなる。
でも、相手が痛みを感じる可能性があることに自覚的でありたい。できるかけぎり、人についているタグ(#)ではなく本人を見るようにしたい。ぼくは思った。
ぼくの中でバスキアは、黒人アーティストではなく、ひとりのアーティストだ。それは、彼が他と比べられないくらいオリジナリティのある作品を残しているから。彼と同じような作品を他のアーティストも作っていたら、「◯◯系作品を描いていた黒人アーティスト」と認識していたかもしれない。人にとって圧倒的な存在になれば、ひとりの人間として見てもらえるってことだと思う。
今日も読んでくれてありがとうございます。
肩書きでなく、名前でしか表現できないっていうのが、一番うれしいんだろうね。