人間は失敗する動物であり、「失敗できる」動物なんです。それは、まわりの人が助けてくれるから。それは、いちど失敗したあとでも、もう一歩踏み出せるから。
「失敗は積極的にしていきたい。なぜなら、それは成功と同じくらい貴重だからだ。失敗がなければ、何が最適なのかわからないだろう」発明家のエジソンはこんな風に言ったそうです。
赤ん坊の頃、誰もがハイハイから転んだりよたよたしながら二足歩行できるようになりました。いちども躓かずに二足歩行した人間はきっといないはず。失敗はなくてはならないもの。それはわかってるけど、エジソンのように失敗に積極的な人は少ない。
でも、失敗できること自体、ラッキーなのかもしれません。
ガラス張りの床のある部屋で、赤ちゃんに自由にハイハイや寝返りなどをさせる実験があります。※1 床の一部が深く掘ってありますが、その上をガラスが覆ってるので安全です。赤ちゃんは最初はなにも気にせずガラス床の上をハイハイで移動します。ところが、転んだり落ちたりした経験をすると、深く掘ってあるガラス床の上を移動しなくなるそうです。
一方、ヒヨコの場合、ちがう結果が出ます。生まれたばかりのヒヨコはガラス床の上を移動しようとしません。野生の世界では、ヒヨコは一度でもどこかに落ちたら助からない可能性が高い。ヒヨコは「高いところはこわい」と生まれたときから脳回路にインストールされているんだそうです。
ヒヨコの本能のほうが、人間よりも優秀のようにも思えます。でも、人間に「高いところはこわい」という本能がないのは、人間は親が助けてくれるから。ヒヨコの赤ちゃんが穴に落ちたとき、ヒヨコの親が穴から引っ張り出すことはむずかしい。でも、人間なら拾い上げることができます。
もちろん、大きすぎる穴では死んでしまいます。でも、小さな穴なら、いのちを落とさずに助けてもらえる。人間は誰かに助けてもらうことを前提にして生まれてくるのかもしれません。
「失敗できること自体、ラッキー」というのは、ヒヨコは本能で決まった範囲のなかでしか生きていくことができない。「ここは高いから危険で行かない」って。でも、「高いところはこわい」という本能のない人間は山や崖にも冒険することができるのです。人間の行動範囲は、本能として、もっと自由です。
失敗しても、誰かが助けてくれる。そして、失敗したあとでも、こわいけれど、もういちどチャレンジしてみようと自分を仕向けることができる。人間は失敗できる動物です。失敗したら、こう思ってはどうでしょうか。「ああ、わたし人間やってるなあ」って。
今日も読んでくれてありがとうございます。
失敗したらいい。死なない程度に。人にも自分にも言う。
※1『パパは脳研究者』子どもを育てる脳科学 池谷 祐二