ラグビーW杯がおもしろい理由。

ラグビーW杯がおもしろい理由。

ラグビーW杯「日本×南アフリカ」、関東地区の平均視聴率が41・6%、瞬間最高は49・1%だったという。なにが、そんなに日本人を魅了したのだろう。「日本が強かったからだろうか?」それはきっと大きな理由だと思う。きっと予選で負けていたら、ここまで盛り上がっていないはずだ。でもそれだけじゃない。

人それぞれ、ラグビーW杯に惹きつけられる理由はちがうだろう。にわかラグビーファンのぼくがラグビーW杯がおもしろいなあと感じた理由について考えてみました。

ひとつめは、「本気」にある。世界大会なんだから、選手が本気で戦うのは当たり前だろうと思うかもしれない。でも、ラグビーの本気は、他のスポーツとはちがう。それは、一歩間違えれば「死ぬ」可能性があるというところだ。

ラグビー日本代表スクラムハーフの田中史朗選手は「もし俺が死んだら、新しいいい人見つけてな」と、前回のW杯のときに妻の智美さんに伝えていた。死ぬかもしれないと思って、自分よりも大きな選手に立ち向かっていく姿が感動をよぶのだ。

ニュージーランド代表が試合前に行う「ハカ」にも、本気への覚悟が見られる。ハカはもともとマオリの戦士が相手を威嚇し、自分たちの士気を高めるために行うもの。

『Ka Mate(カ マテ)』は聞いたこのある人も多いだろう。「Ka mate, ka mate!(カ マテ カ マテ)ka ora! ka ora!(カ オラ カ オラ)」という歌詞だ。「がんばって」に聞こえるなあなんて、なんとなく聞いていた歌詞の意味は、「私は死ぬ、私は死ぬ!私は生きる、私は生きる!」というものだった。彼らは、毎試合、毎試合、生死を意識しているのだ。

国歌斉唱しながら泣いている選手が多いラグビー。これも「死への恐怖」と「生の感動」のグラーデーションの感情から来るものなんじゃないだろうか。

ふたつめは、「国際性」にある。ラグビー日本代表選手を見て、「あれ、なんで外国人選手がいるの?」と思った人も多いだろう。

ラグビーの代表選手資格(エリジビリティ)は、「国籍」「血縁」「地縁」の3要件のうち、いずれか1つを満たせばいい。

1.出生地がその国であること
2.両親、祖父母のうちひとりがその国の出身であること
3.その国で3年以上、継続して居住。または通算10年にわたり居住

中でも「3」がユニークだ。「地縁」があれば、代表選手になれる。(これに加え、「ひとりの選手は1ヵ国の代表にしかなれない」という制約がある。また日本大会以降、3年以上の居住は5年へと変更されることになっている)

日本は島国のため、単一民族かのように育ってきた。陸続きの国々や移民大国のアメリカに比べて見た目の違いに敏感に反応する。海外から来た人と協力していくことに、なれていない。日本はこれから移民を多く受け入れていくことになる。

日本代表、日本人選手と外国人選手のフラットな関係性は、「こうやって協力するんだよ」と未来のロールモデルを見せてくれているように感じる。タックルをされたあとにカバーをしないと相手にボールを奪われるラグビー。日本人選手と外国人選手が同じチームでカバーしてカバーしてカバーする。補い合うことを体を張って教えてくれる。

前回のW杯で日本代表として活躍した五郎丸選手も「外国人選手と力を合わせてプレーすることがラグビーの素晴らしさ」と明言している。

みっつめは、「個性」にある。「みんな違って、みんないい」そんな言葉がラグビーを見ていると出てくる。大きな選手はパワーと献身性、小さな選手はスピードや判断力。異なる性質の選手がいて、強くなるラグビー。とてつもなくすごい選手、たとえば世界最高レベルのニュージーランド代表ボーデン・バレット選手が15人いても、おそらくW杯で優勝できないと思う。

ぼくは中学高校とバスケットボールをやっていたが、バスケはちょっとちがう。もちろん、ポジションによって求められる役割は違うし、個性豊かなチームは強い。でも、オフェンスとディフェンスの「1対1」が基本になる。

現在のNBA No.1プレイヤー、レブロン・ジェームズが5人いたら、チームは優勝すると思う。もちろん、これはレブロン・ジェームズという選手が小さな選手が多いPG(ポイントガード)というポジションから大きな選手が多いPF(パワーフォワード)までこなせる類稀な能力をもっていることもある。

子供がラグビーをやっている知り合いは、「どんな子供にも、その子にあったポジションがあるんですよ」と言う。デブにも、チビにも、のっぽにも。そんなスポーツはなかなかない。

ラグビー日本代表、みんなの個性が生かされたいいチームでした。

今日も読んでくれて、ありがとうございます。
あなたはラグビーのどんなところに魅力を感じましたか?

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マスダヒロシ
マスダヒロシ

The U 編集長/グラフィックデザイナー/イラストレーター 1987年埼玉県生まれ。2017年から1年半世界76カ国を旅をして、当たり前は時代と場所でひょいっと変わることを知る。イラストのご依頼お待ちしております。Instagram @hiroshimasud