アメリカは思ったより自由じゃない?中田大樹 前編

アメリカは思ったより自由じゃない?中田大樹 前編

インタヴューの相手は、アメリカのポートランドで働いている中田大樹。大学からの友人です。全米住みたい街No.1にもなったことのあるポートランドでの暮らしについて、アメリカと日本の違いについて話を聞きました。

「Keep Portland Weird(ポートランドよ、ヘンでいよう!)」のスローガンを掲げているポートランド、そんな街に暮らしているからか、いい意味でヘンな人になってました。

前編、後編に分けてお届します。
後編/「自給自足的に生きるポートランド」

中田大樹(ナカタダイキ)1987年埼玉県生まれ。日本育ち。米国での教員、日本での教員の経験を経て、スタートアップに入社後、当社の米国支部立ち上げを担当し、現在支部長を務める。趣味は新しいことを始めることと、筋トレ。

マスダ ヒロシ1987年埼玉県生まれ。The U 編集長。グラフィックデザイナー。イラストレーター。2017年より1年半世界中を旅する。旅中、いろんな国の道で似顔絵を描いていた。

世界に広がるオタクカルチャー

ダイキ
(待ち合わせ場所に車で登場)ひさしぶり(笑)。 えっ、なにやってるの?

マスダ
そっちこそ(笑)。 まあ、(車に)おじゃまします。

アメリカ ポートランド 中田

(車のなかにあったレコードを観て)これだれ?

ダイキ
わからないけど、いいでしょ?アンティークショップで見つけたんだ。

アメリカ ポートランド 中田
古いものを大切にするポートランドには、さまざまなアンティークショップが立ち並んでいる

マスダ
めっちゃ、かっこいいね。大学卒業後会ってないから、もう7、8年ぶりくらいかな。今なにしてるの?

ダイキ
日本のオタクカルチャーを世界に広げてる(笑)。ひろしは?

マスダ
えっ、なにそれ?こっちは、世界を一年半旅してた。

ダイキ
いいなー。おれはトーキョー・オタク・モードっていう会社で、アメリカ支部長やってるよ。日本のポップカルチャーって世界で人気だから、インターネットのチカラを使って北米中心に世界中に届けてる。メインはAmazonみたいに、アニメに関する商品をオンラインで販売してる。

マスダ
へえ、おもしろそうだなあ。

ダイキ
約2000万人がfacebookページに「いいね!」してくれてて、facebookのファンページから会社がはじまった、けっこうクレイジーな会社。

マスダ
この前、ワシントンでオタコンやってて参加してきたけど、世界中にそんなにファンがいるんだね。

オタコン 2018 ワシントン
ワシントンDCで開催されていたアニメ・マンガのイベント オタコン(OTAKON)

ダイキ
うん、(facebookファンページの)日本のファンは1%くらいしかいないかな。最初から携わっていたわけじゃないけど、最初は仕事おわりに部活のように人が集まって、海外に向けたfacebookのファンページをつくってて、メディアとして大きくなったあとに、アメリカのインキュベーション施設でプレゼンが成功して、投資してもらってスタートした感じかな。

マスダ
インキュベーション施設って?

ダイキ
事業をはじめるための合宿みたいなもの。そこでどういう事業をやりたいかをプレゼンして、投資してもらうんだ。

ダイキ
それと、最近は日米オレゴン協会 (JASO) のボードメンバーになった。若いメンバー集めたいんだよねって言われて、21歳から35歳くらいまでのメンバーで月1でミートアップやってる。

マスダ
集まって、どんなこと話してるの?

ダイキ
まだなにかやるとかは決まってないんだけど、日本から来た日本人もいれば、日系人、ハーフ、アメリカ人もいて、みんなでネットワークをつくってる感じ。そのネットワークで、最近は書道アーティストのWEBサイトのお手伝いもしてる。

マスダ
さいきんは、そうやって会社での活動の他に、個人での活動も自由になってきてるよね。

ダイキ
うん、(トーキョー・オタク・モードも)リモートワークで出勤しない働き方も増えてきたよ。東京から北海道に移住した人が2人いる。

アメリカと日本の働き方の違い

マスダ
アメリカでは、複業している人って多い?

ダイキ
みんなってわけじゃないけど、日本に比べると圧倒的に多いね。

マスダ
それは、自由な環境があるから?

ダイキ
うーん、大きな理由は、確定申告の仕組みだと思う。日本の場合だと、確定申告は勤めている会社や団体がやってくれるものだけど、アメリカの場合は基本的に自分でやるもの。複業がダメって法律でしばられてないし、複業してても、ばれないからかな。

アメリカ ポートランド 中田

マスダ
他にも、アメリカと日本の働き方のちがいってある?

ダイキ
基本、雇われる側はいつ辞めていいし、雇う側もいつでもクビにしていいっていうところかな。

マスダ
日本の場合は、基本2週間必要だよね。

ダイキ
この雇用形態のことを「At Will」っていうんだけど、極端な話「明日辞めます」もいいし、ダンボールを渡して「明日からクビ」もあり。

マスダ
そうなると、お互い緊張関係が続きそうだけど、ダイキはこの雇用のやり方どう思ってるの?

ダイキ
めっちゃいいと思う。お互い本気になれるから。雇われる側は、「明日切られてもおかしくない」と思って働くし、雇う側は、「働かせてやってるぞ」なんて思わなくなるし。

マスダ
うん、たしかにお互いの存在を当たり前と思わなくなるかもね。仕事も結婚も、お互いが鍵をもっているってのは、いいよね。

ダイキ
あと、アメリカ人めっちゃ早く帰る(笑)。

マスダ
へっ、それってなんでなんだろう?

ダイキ
たとえば、雇う側は、社員に月50万円でこの仕事をしてくださいって契約するよね。残業すると、その時間でその仕事をする能力がなかったことになる。それと、雇う側は残業代を支払わければならなくなるよね。でも、残業がなければ、追加でお金を支払わなくていいし、早く家に帰れる。両者にとってハッピー。

アメリカ人、はやく帰るために、ほんとう一生懸命。笑

マスダ
どんなふうに?

ダイキ
今日は、仕事がおわらなそうだなってときは、お昼の休憩時間も働いてたり。

あと、仕事をそんなに無理しない。「気合いでやります」ってのがないかな。自分ができるのがAからBまでだとして、AからCを上司に頼まれても、「自分はAからBまでしかできない」って言う。じぶんの能力とか価値を把握している印象かな。

マスダ
うーん、そうすると、お互いに折れずに「やりたまえ」、「やりません」の繰り返しになりそうだけど。

ダイキ
それは、お互いの交渉だよね。ちなみにこの話は、主に西海岸の経験からくるものだから、「アメリカ」として一概には言えないかな。中部とか東部はまた違うカルチャーがあるし。本当に、「アメリカ」の一部の話と思ってほしい。

マスダ
なるほど、アメリカは州ごとに法律も色もちがうからね。

ルールって変えることができる

アメリカ ポートランド 中田

ダイキ
アメリカって訴訟が多いってイメージない?

マスダ
あるね。なかには、そんなこと訴える必要ある?ってのも。

ダイキ
そう、日本人がよく聞くのはスターバックスとかマクドナルドコーヒーが熱くて訴えたってのもあるね。なんで、アメリカで訴訟が多いかっていうと、弁護が成果報酬のところも多くあって、お金がなくても訴えることができるんだよね。

だから、常に弱いものでも訴えることができるし、法律の後ろ盾がある。

マスダ
働いてるときでさえ、お互いに訴えられないか心配な部分もあるのかなあ。

ダイキ
アメリカの場合、経営側が怯えて働かないように就業規則がしっかりしてるんだよね。日本の場合、常時労働者10人以上で作らないといけないんだけど、アメリカの場合、つくっても、つくらないくてもいい。でも、社員がひとりでもいたら、つくるパターンが多い。共通のルールをつくって、経営に専念するってのがアメリカの働き方。

マスダ
アメリカって、自由ってイメージがあるけど、、、

ダイキ
そう、アメリカって思ったより自由じゃないし、ちゃんとしてる(笑)。

でも、アメリカはルールを変えやすいんだよね。アメリカは判例法主義だから、なにかあったら、その度に法律が追加されるイメージ。日本は制定法主義だから、ルールが先にあって、国民がそれに従ってる感じ。

マスダ
当たり前のような顔したルールは変えられないって、幻想のように思ってるけど、永久不変じゃないんだよね。

後編/「自給自足的に生きるポートランド」

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マスダヒロシ
マスダヒロシ

The U 編集長/グラフィックデザイナー/イラストレーター 1987年埼玉県生まれ。2017年から1年半世界76カ国を旅をして、当たり前は時代と場所でひょいっと変わることを知る。イラストのご依頼お待ちしております。Instagram @hiroshimasud