FTXのコタローさん、レズビアンのリエさん、ストレートのマスダの鼎談です。アラサーで旅好きの３人が、カミングアウトについて、日本と海外での受け入れられ方の違いについて話しました。セクシャリティが違うだけで、ぼくたちはほとんど一緒。
LGBTQの友だちがまだいない方に、ぜひ読んでもらいたいインタヴューになりました。
※FTX＝Female To X（生物学的な性は女性だが、女性・男性の性別いずれでもない、またはどちらでもあるという性自認を持つ人々）
※LGBTQ＝レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィアまたはクエッショニング
前編、後編に分けてお届します。
前編／はじめてできたレズビアンとFTXの友だち
コタローどっちつかずな中性（FTX）アラサー。2年ほど世界放浪の旅へ。今はたまに旅しつつ、日本でのんびり暮らしている。
リエ2017年より1年半かけて世界を旅したアラサーレズビアン。旅中、各国のLGBTスポットを訪問し、その情報を自身のブログで発信している。
マスダ ヒロシ1987年埼玉県生まれ。The U 編集長。グラフィックデザイナー。イラストレーター。2017年より1年半世界中を旅する。エチオピアでリエさんに出合う。
ふつうだったらおかしいことを
マスダ
逆に、（レズビアンってことを誰かに告白して）うれしくないリアクションってありましたか？
リエ
高校生の頃、人生ではじめて、先生に「私、女性が好きなんです」って、カミングアウトをしたら、「女友達の好きでいいんじゃない？」って返された。トラウマってわけじゃないけど。。。
マスダ
完全に否定されてしまったわけですね。
コタロー
好きになる対象が異性じゃないといけないっていう概念があって、理解できなかったんだろうね。
好きになった人がたまたま女性でした。好きになった人がたまたま男性でした。ただ、それだけなのに。
マスダ
それって、ぼくが好きになった女性について、他の人が「なんでお前、あんな人を好きになったんだ。お前おかしいぞ」って言われてるような感覚ですよね。自分の好きになる人くらい、自分で決めるよって。
コタロー
そう、ふつうだったらおかしいよね。
マスダ
ふつうだったら、おかしいってことって他にもありますか？
リエ
旅中に男性にカミングアウトしたら、初対面にも関わらず第一声が「女性同士って、どうやってやってるんですか？」って。
コタロー
ネットでそういう記事読んだことあるけど、本当にいるんだね。
リエ
たしかに、気になるとは思うけど、初対面ではね。
コタロー
仲良くなってからだったらね。
マスダ
ぼくが初対面の女性に「どうやって、やってるんですか？」って聞いたら、おかしいですもんね。
同性結婚が認められない裏で
マスダ
日本では、憲法上の問題で、同性結婚がまだ認められてないですけど、結婚したいって思われますか？
コタロー
今は思わないけど、前に付き合っていた彼女とは結婚を考えてたときがあったなあ。戸籍上の性別を変えて。
マスダ
戸籍上の性別って、かんたんに変えることができるんですか？
コタロー
カラダを変えて、２人以上のカウンセリングを受けないといけない。
家庭裁判所は，性同一性障害者であって，次の1から6までの要件のいずれにも該当する者について，性別の取扱いの変更の審判をすることができます。
1.二人以上の医師により，性同一性障害であることが診断されていること
2.20歳以上であること
3.現に婚姻をしていないこと
4.現に未成年の子がいないこと
5.生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
6.他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること
マスダ
カラダってどんな風に変えるんですか？
コタロー
男性から女性になるためには精巣をとらなければいけなくて、女性から男性になるためには子宮卵巣をとらなければいけない。
マスダ
えー、ハードル高いですね。カラダはそのままでいいって言う方もいるでしょうし。
コタロー
しかも、手術した後も、ホルモンのバランスを考えてホルモン注射を打ち続けないとダメ。
海外では手術してなくても戸籍上の性別を変更できる国もあって、それと比べると、ハードル高いし、カラダへの負担も大きい。
リエ
わたしも今は結婚を考えてないけど、同性同士でも異性同士と同じ権利が認められていいはず。
コタロー
相手とそのときの環境によるね。
プライドはみんなにとってのお祭り
マスダ
海外と比べるたときに、日本って生きづらい部分ってあるんですか？
コタロー
アジアだと、タイ、フィリピン、台湾行くと自由になれる。LGBTに寛容な国は居心地がいいかな。
リエ
日本だとレズビアンと話すときと、レズビアンじゃない人と話すときで話す内容を分けているけど、海外だと理解が進んでいる国なら、話す内容を気にしなくていい感じがある。
マスダ
オランダとかだと、もっと自由な感じですよね。オランダのプライドに参加したときは、どんな感じでしたか？
コタロー
（オランダの首都）アムステルダムのプライド（LGBTQのパレード）に参加したときは、人が何十万人もいて、ディスニーランド状態。
アムステルダムのパレードは、フロート（船）に人が乗って、運河を進んでいくスタイル。
マスダ
歩くんじゃないんですね。
コタロー
最初に市長が乗ったフロート、そのあとは銀行やスーパーなどの大企業やNGOのいくつものフロートが何時間もかけて進んでいく。
運河の周りには、フロートの様子が見えないほど人が集まってたんだけど、地元のやさしいおばちゃんが「この子にも見せてあげて」って言ってくれて、道を通してくれて。「おばちゃんもLGBTQなの？」って聞いたら「ちがうよ」、「毎年の楽しみなんだよ」ってすごく誇らしげで。
当事者じゃない人も、日本でいう花火大会のように楽しんでて。
マスダ
みんなが楽しめるお祭りなんですね。
リエ
私がイギリスのブライトンのプライドに参加したときは、警察、消防も参加してたよ。
マスダ
それは、警備のためじゃなくて？
リエ
そう、一団体として歩いてた。当事者じゃなくても、お祭りとして楽しんでた感じ。
コタロー
日本だと、まだ当事者だけ。いても、その家族だもんね。
田舎のおじいちゃんだって参加
リエ
あっ、オランダでいうと、「Walking Festival」っていうみんなで１日40キロ歩くフェスティバルに４日間参加してたんだけど、そのなかの１日に「Pink Day」（同性愛者のための日？）があって、「その日はみんなでピンクのTシャツを着てね」って。
ピンクのTシャツを着て歩くと、田舎にも関わらず、その日はみんなピンクのTシャツを着てて、おじいちゃんまで着てたんだよね。日本だったら、都会での理解や若者の理解は少しずつ進んできてると思うんだけど、田舎やお年寄りの理解はまだまだだなって。
あと、「Walking Festival」でおもしろかったのが、私たちが歩いてるのを患者さんにも見せるために、病院から患者さんをベッドごと運んできてて、何十ものベッドが道に並んでたこと。
日本とはキャパシティーがちがうよね（笑）。
マスダ
車椅子じゃなくて、ベッドごと（笑）。B級映画の一場面みたいで、想像しただけで、おもしろい。
人と人は違うことが前提
マスダ
なんなんですかね、海外と日本と、その器の大きさの違いって？
コタロー
たとえば、アメリカって移民を受け入れるのが当たり前で、違う人種同士が一緒に生活してるのが自然だよね。受け入れざるえなかったってのもあるんだけど。
マスダ
人と人が違うことが前提ってことですね？
コタロー
日本人の自分なんかは、アメリカ人でもアジア系の顔をしている人がいたら、「バックグラウンドはどこなの？」って興味があって聞いちゃうんだよね。
でも、アメリカ人の友人に聞いたら、バックグラウンドは違って当たり前だからそういうの聞かないんだって。人間を一個人で見てる。
マスダ
ああ、そういうこと気にしなくなるんですね。
コタロー
日本だと島国で単一民族かのように生きているから、そうはならない。
マスダ
それって性に関しても同じことが言えそうですね。
コタロー
さまざまなセクシャリティがあるのが当たり前だと思えば、聞くこともなくなるだろうし。
はじめから、言わないでいいのがいいよね。好きな人を紹介するときに、この人が好きなんだってのがいい。一個人で見てほしい。
マスダ
そういつのが当たり前になったらいいですね。好きな人を紹介されたときに、ああそうだったんだって。
恋する気持ちはいっしょ
マスダ
海外をよく旅してるふたりですが、海外の女性との恋ってありましたか？
リエ
付き合うってのはなかったけど、旅先で知り合った女性が、腕を組んできたり、映画館で一緒に観てるときに、手を恋人つなぎしてきて。おっ、いけるかもって（笑）。
コタロー
えー、いい感じ。
リエ
彼氏いたんだけど、「いっしょにいたい」とか言ってきたりして。
マスダ
えっ、両方が恋愛対象なんですかね？
リエ
そのときはわからなくて、私が日本に帰ってきてからもやりとりしてて、「リエと一緒に住みたい」って、メッセージが届いたんだよね。
えっ、まさか、一緒に住みたいってことは、、、「私と付き合いたいってこと？」ってメッセージを送ったら、「I am not a Gaaaaay!（私はゲイじゃなーい！）」って（笑）。
マスダ
それは、勘違いしちゃう。
サプライズで、その人のお家に行かなくてよかったですね（笑）。
リエ
海外に住んだら、いっしょにどうやって暮らしていくか妄想してたんだけどね（笑）。
その人は敬虔なカトリック教徒だから、同性愛は罪深いものっていう意識があるんだよね。
コタロー
もしかしたら、女性を好きって気持ちがあるのかもしれないね。
マスダ
コタローさんもありましたか？
コタロー
旅中に出合った台湾人の女の子がいて、話しをしてるときかわいい顔でこっちを見て来るし、歩いてるときに腕を組んでくるし、もう恋しちゃいそうで（笑）。ひとつのダブルベッドに一緒に寝ることもあって。何もしなかったけど、ドキドキで。
リエ
ドキドキだね。
コタロー
台湾に遊びにいったときその子に会うと、旅中はニコニコしてたんだけど、なんか疲れてる感じで。「どうしたの？」って聞いたら、将来のことや仕事のこと悩んでるみたいで泣き出しちゃって。
頭をポンポンってやったんだけど、なんであのとき抱き寄せなかったんだろうって後悔してるんです（笑）。
リエ
弱ってるときがチャンスなのに（笑）。
マスダ
あのとき、こうしてたらよかったなあってありますよね（笑）。レズビアンでもFTXでも異性愛者でも、恋する気持ち、うまくいかない感じって同じなんですね。
コタロー
そう、好きになる対象が違うだけ。
（コタローさん、リエさんとの鼎談はこちらでおしまいです。お読みいただき、ありがとうございました）
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