ゾウのウンコは天然の植木鉢 中村 亜矢子 第4回

ゾウのウンコは天然の植木鉢 中村 亜矢子 第4回

インタヴューの相手は、中村 亜矢子さん。ゾウが大好きで、ゾウの現状を知ってもらうために、ゾウのウンコで紙をつくっています。

新しいウンコに出会うたびに、「わぁ」ってなる中村さん。ウンコではじまり、ウンコでおわるインタヴューです。これを読めば、2019年、運がつくこと間違いないゾウ!?

全5回に分けてお届します。第4回です。







The U ウェブマガジン ザ・ユー 中村 亜矢子 象のUNKO★elephant paper  ゾウ ウンコ 紙 
The U ウェブマガジン ザ・ユー 中村 亜矢子 象のUNKO★elephant paper  ゾウ ウンコ 紙 

中村 亜矢子1984年東京都生まれ。象のUNKO elephant paper代表。環境活動家。象糞紙作家。象の糞で紙を作りながら野生動物の保護活動を続けいる。

マスダ ヒロシ1987年埼玉県生まれ。The U 編集長。イラストレーター。1月中旬から原宿の「ビオ オジヤン カフェ」で個展やります。1年半海外を旅してた。

ゾウは森の植木屋さん

マスダ
ゾウの現状についてもう少し教えてください。

中村
今、アフリカゾウでいうと35万〜40万頭います。35万頭っていうと多そうに感じるんですけど、35万人都市って、いわき市とか川越市で。ちなみに横浜市だと約370万人もいるんですよ。

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マスダ
アフリカの大陸に、たったそれくらいしかいないんですね。

中村
サイだと、2万5000頭しかいないんです。

マスダ
タンザニアで見ましたけど、希少ですよね。

中村
サイは角をとるために、密猟にされていて。角は漢方薬として薬効があるって言われてるんですけど、成分は髪の毛や爪と同じケラチンで、科学的には全く根拠がないんですよ。

マスダ
根拠のない迷信が伝わってるんですか。

中村
そうです、そうです。サイという強い動物からとれるものだから、チカラがもらえますって。

サイなんかだと、東京ドームも埋められないわけですよ。東京ドームに入れる人数は5万5000だから半分にもならないですね。ゾウもサイも絶滅の危機にあるんです。

アジアゾウについては、4万頭もいなくて、象牙目的というよりは、森がパーム油をとるためのプランテーション等にどんどんなっていってて、住処がなくなっている状況です。

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ゾウは1日に何十キロも移動する動物なので、森がちょっとずつ残っていても、農地によって分断されてしまうと、移動ができなくなっちゃうんですよね。

移動できなくなると、畑に入って殺されたり、森の食物がなくなったりと、いろんな問題が生まれるんですよ。

自然の森っていうのは、過去150年と比べて2割しか残っていないらしいんですね。ってことは、ゾウの数だって2割になりますよね。森と共にゾウも減っている状況です。

マスダ
日本もパーム油を使った商品を販売してますよね。

中村
あんまり、原材料名でパーム油って書いていないんですけど、植物油脂って書いてある物のだいたいはパーム油って考えてもいいのかな。石鹸とか乳化製品とかマヨネーズとか。ほとんどの製品に使われていたりして、日本の場合だと使わないで暮らすのが難しいですけど。

ただ、そういう情報を知っていれば、入っていない製品があるのであれば使ってみようと思ったり、選択肢が変わると思います。

象牙については、15分に1頭殺されていて、「かわいそうだよね」ってのがあるんですけど、それだけじゃなくて。ゾウのウンコってすごいんですよ。ゾウってそんなに消化効率がよくないので、木の実などを食べてウンコを出たときに、ウンコの中にいっぱい種が入っているんですよね。

だから、普通の木の実が地面に落ちるよりも、お腹のなかを通ると発芽率があがるんです。

マスダ
へえ、すごい。

中村
あったかいし、水分を含んでるし、栄養分を含んでるってことで、ウンコは天然の植木鉢なんですね。

ゾウって1日に100kgも餌を食べているので、自然を破壊してるって思われがちなんですけど、そうじゃなくて、実はゾウって森を再生する役割があるんです。しかも、森の木をバーンって倒せる動物ってゾウ以外にいないんですよ。ゾウが木を倒すことで、今まで光が入らなかったところに光が入ったり、林道整備をして、種も巻いていくので、古い森を食べて、新しい森を再生させる役割があって。

マスダ
ゾウって、すごいですね。間伐をしてくれていたなんて、知りませんでした。

中村
なので、ゾウを殺すと「かわいそう」ってだけじゃなくて、森の循環を破壊してしまうんです。

生き物って、循環するようにうまくできているんですよね。その循環からゾウが外れてしまうと、ゾウのカラダが大きいだけ他の生き物に与える影響も大きいんじゃないと思います。

ゾウの減少に日本人も関わっている

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中村
あと、ゾウの密猟をすると、1ヶ月家族が養えるくらいのお金が得られるんですよね。だから、仕事がなくて貧しい人がやっていたんです。ただ最近は「象牙はお金になるのか、軍資金にしよう」と、テロリストが密猟をしていて、ますますひどくなってますね。

ヘリコプターで来て、マシンガンで30頭の群れをバーって殺しちゃうとか、あるらしいんですよ。

マスダ
ヘリコプターを用意できる金があるんですね。

中村
そうそう、それでも元がとれるくらい象牙が高く売れるってことですよね。

国際取引(国同士の輸出入)はワシントン条約で禁止されているんですけど、日本国内の場合、「登録されている象牙であればいいですよ」って言われてるんですね。でも加工品だと登録は必要なくなっちゃうんで、「密輸したものを加工したら売れちゃうよ」っていう状態なんですね。

マスダ
法律の抜け穴があるんですね。

中村
登録っていうのも雑な法律で、「ワシントン条約で国外との輸出入が禁止される前の象牙であれば後から登録できますよ」ってなってるんです。

マスダ
ああ、それがワシントン条約前の象牙か後の象牙か、判断できないんですね。

中村
「このまま国内取引をしても大丈夫なの?」「取り締まれてないよね?」っていう状態なんです。

ちなみに、ヤフオクでも普通に買えるんですよね。

マスダ
へえ、ヤフオクで象牙が買えちゃうんですね。

中村
加工品も含めてですけど、普通に出回ってるんです。密猟の推移と一本象牙のオークション登録数の推移がとても似ているんですよね。かなり、グレーだなあって。

マスダ
ワシントン条約が決まった後って、ふつうに考えたら密猟の数は減ると思うんですけど、そうはなってないってことですか?

中村
そこ大事なことなんですけど、一時期減ったんですよ。ああ、落ち着いてきたねってなったときに、アフリカ諸国で「じつは在庫の象牙があるんだよね。この象牙を野生動物の保護のためのお金にできないか」って申し出があって、「じゃあ、特別にこの年だけ解禁しましょう」って。それで日本と中国が買ってるんですけど、それ2回やってるんですよね。1回目のときは大丈夫だったんですけど、2回目のときに「あっ、ほしい人がいるんだ」って密猟がバーッと増えたんですよね。

20年前はアフリカゾウって270万頭いたんですよ。それが今では35万〜40万頭とすごいいきおいで減っていて。日本もバブル期を中心に少なくとも25万頭分の象牙を輸入していて、アフリカの遠い話に聞こえるんですけど、日本人も深く関わってるんですよね。

マスダ
日本人が象牙を使っている意識って少ないと思うんですけど、具体的に象牙は何に使われているんですか?

中村
和楽器のバチとかお琴の爪とか、和楽器で使われていることは多いですね。あとは飾りや彫刻ですね。一番売り買いが激しいのは、印鑑です。

「そんなに売れているの?」って思うんですけど、未だに大学卒業祝いにとか、成人祝いにとか、おじいちゃんが孫に贈るとか。あと、外国人がお土産で買っていくこともあるようです。

第5回/象牙やめてウンコにしませんか?

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撮影協力/GALLERY KISSA

マスダヒロシ
マスダヒロシ

The U 編集長/グラフィックデザイナー/イラストレーター 1987年埼玉県生まれ。2017年から1年半世界76カ国を旅をして、当たり前は時代と場所でひょいっと変わることを知る。イラストのご依頼お待ちしております。Instagram @hiroshimasud