小嶌 久美子さんに話を聞きました。コワーキングスペースの研究をしたり、東京と京都の二拠点生活したり、旅館のリブランディングをしたり、お坊さんの法話の研修の講師をしたり、一言では語れない小嶌さん。
忙しい毎日に、足を止めて、「大事なことってなんだろう」って考えたくなるインタヴューになりました。
1983年京都生まれ、横浜&イギリス育ち。東京・京都の二拠点生活者。各種新規事業や行政の施策策定のリサーチや企画、プロジェクトマネジメントを行う。大学院は都市交通研。人の動線や興味関心の動きを視るのが好き。一次情報から考えることが好き。インタビューが好き。街歩きが好き。
1987年埼玉県生まれ。The U 編集長。イラストレーター。1月15日から原宿の「ビオ オジヤン カフェ」で個展やってます。1年半海外を旅してた。
どういう風に関係性をつくるか
マスダ
コワーキングスペースの魅力ってなんですか?
小嶌
わたしにとっての魅力は、研究対象そのものとして、おもしろくって。コワーキングスペースの立地、内装、間取り、大きさ、動線のつくり方によって、その場所の性格がぜんぜん変わってくる。集まる人の特性も、求めるものも、関係性も変わってくる。いろんな実験ができる空間だなあって思う。
それと、どうやって人の関係性が育まれるかってっていうのがおもしろいですね。人って出会い方でぜんぜん関係性が変わりますよね。
マスダ
ああ、同じ人同士の出会いでも、道で突然話しかけたら、きもちわるい人って思われるかもしれないけど、友だちの紹介だと、やさしい人って思われるかもしれないですもんね。
小嶌
どういう風に関係性をつくるかっていう実験が見られる場所なので、おもしろいですね。
マスダ
今まで行ったなかで、いいなあって思う場所の特徴ってありますか?
小嶌
それよく聞かれるんですけど、みんな違って、みんないい。
マスダ
じゃあ、いいっていう基準だと曖昧なので、関係性が築けているコワーキングスペースの特徴ってありましたか?
小嶌
関係性をつくるアプローチっていくつかあって、たとえば、ここ(PoRTAL)の場合はコーヒータイムがあって、毎日午後6時くらいになるとキッチンの近くでコーヒーとお菓子を出して、コーヒータイムの看板をもった人が「気が向けば来てね」って歩き回る。
自由意志のお茶会でユルっと話しはじめると、「この人は漫画家だったんだ」、「こういう建築・設計してるんだ」、「こういうサービスをつくってるんだ」とか、ユルユルとみんなのことをわかってくるから、近い距離に座ってても気分がわるくならない。
あと、ここは2、3人規模の会社が多くて。小さい部屋で、毎日同じ顔を合わせていたら、うーんって鬱屈するかもしれないけど、ここには隣人がいて、いい意味で気晴らしになるのかなあって。
マスダ
ニューヨークのコワーキングスペースでは、午後4時になるとポップコーンマシーンが稼働して、いろんな人が集まってくるって書いてましたよね。
小嶌
そうです、そうです。隣人と人間関係を育てていくてのが、生きていくのに重要なんじゃないかなあって。ちゃんと人間関係ができてたら、その関係の中からお金も入ってくるんじゃないかなあって思ったり。
マスダ
人間関係からフツフツと仕事が湧いてくると。
小嶌
うん、京都に住んでいると、わたし何しているのかわかりずらいから周りの人が心配してくれて、「小嶌さん、何してるかわからへんから、ちゃんと食べていけてる?あれやったら、うちも仕事頼みたいねんけど」みたいな。
マスダ
心配してもらえて、うれしいですね。
小嶌
「いやいや、無理して頼まなくてもいいですよ。東京の会社から仕事もらってるんで大丈夫ですよ」って(笑)。
2018年は自分の中であんまり振るわなくて、「仕事しなかったんじゃないか自分」って特に年の後半は思って。それなのに月々にいくらか入ってきてるのは、すごいことだなって。
マスダ
おお、それはすごい。
小嶌
だから、国や政府がベーシックインカムって言わなくても、信頼関係、人間関係ができていれば、「この子を食べさせてあげなくちゃ」って人が現れるから、大丈夫って思ったり。
マスダ
隣人に「食べてるの?ご飯ないなら今日は家で食べて行きな」っていうのは、昔からあったことですけど、今の時代の日本にとっては、新しい感覚ですね。
小嶌
そう、「この野菜余ったからどう?」とか。
なんか、、、人間関係がわたしは、、、ふだんいい扱いできているかは別として、、、人間関係がわたしは大きいというか。
自分が大事にしたい人との時間をつくって、自分がイヤだなあって思う人との時間はつくらない。わたしにとって、いい人でなくても、他の人にとってみたらすごく必要とされているような人かもしれないから、その人はわたしではない必要とする人との時間を育てていったほうがいいなあって。相性もあるし。
自分が大事にできる人との時間を大事にしたいし、それによっていろんなモノゴトが生まれたらいいなあって。
同じような価値観の人がそこに集まる
マスダ
京都だけってわけじゃないですが、その土地の人との関係が今まったくない人は、どうやって人間関係をつくればいいと思いますか?
小嶌
自分の興味のあるモノとかコトに足を運んでみるのがいいんじゃないですか。あと、もう1つは、自分がいいなあって思うホテルとかゲストハウスに泊まり歩きするってのはどうですか。
前者は、わたしの場合、コワーキングスペースに興味があったから、京都に行ったら回ってみようって。回ってたら、どんどん知り合いや友だちができて、そこから仕事をもらえたりした。
後者は、京都でAirbnbを使って3泊お家に泊まらせてもらったら、「(家賃を払って)家にしばらく住んでもいいよ」って言ってくれて。そこに住んでたら、その子が友だちを連れてきて宴会もするから、どんどん友だちもできるし。京都はゲストハウスとかホテルが多いから、ゲストハウスだったらカフェバーも付いていることも多いからそこでスタッフさんや旅人との人間関係が生まれることもありますよね。
あと、シェアハウスに住んでもいいんじゃないかなあ。Airbnbの後は、シェアハウスに住んで人間関係が広がったし、シェアハウスのオーナーさんと仲良くなって、オーナーさんのホテル立ち上げのプロジェクトマネージャーをやったことあるし。人間関係をつくることはできますね。
マスダ
とりあえず、自分の溢れ出る好きをコンパスにして、人のいるところに向かってみるんですね。
小嶌
自分の好き嫌いを大事にして、人間関係をつくっていくのがいいんじゃないのかなあ。
ホテル一軒泊まるにしても、数えきれない選択肢の中から選ぶわけじゃないですか。安いところがいいって言う人がいれば、お洒落なところがいいと言う人もいる。ある価値観をもってそのホテルを選んでる。
だから、同じような価値観の人がそこに集まるんですよね。ホテルをつくった人も、スタッフさんも、宿泊者も。
マスダ
それは、おもしろいですね。それを広げたら都市や街になりますもんね。
小嶌
そうそうそうそう。
マスダ
ゲストハウスやコワーキングスペースに近い価値観の人が集まるように、それぞれの街にも近い価値や感覚を持っている人が集まりますもんね。
小嶌
近くても蒲田と恵比寿に住む人って、ぜんぜん違うわけじゃないですか。だから、その場所を選んで来るってことは、その人たちに共通したなにがあると思う。
マスダ
じゃあ、仲良くなりやすいですね。
小嶌
仲良くなりやすいし、何か通じるものがある。この人だったら仕事を安心して受けることができるなあ、発注することができるなあってのはあるかもしれない。
だから、コワーキングスペースに関して思うのは、その場所の特性をつくること。特性のない場所を人は選ばない。人間関係が育てるためにも、青なら青、赤なら赤の特性をもった場所をつくってほしい。
マスダ
なんとなく流行ってるとかじゃなくて。
小嶌
個性のあるコワーキングスペースをつくってほしいから「こうやったら正解。こうしたら上手くいく」って、わたしはあまり言いたくなくて。
「自分はこういう場所をつくりたい」っていうコワーキングスペースをつくっていったほうが、それに惹かれる人が集まってきて、その人たちなりの言語で会話をしはじめて、関係性が育まれる。その場所にいる人がさらに、その場所の魅力にもなる。
そういう場所が増えれば、「外にお出かけしてみよう」っていう、セレンディピティーのおもしろさがもっと増えるんじゃないかなあ。
(小嶌さんとの対談はこちらでおしまいです。お読みいただき、ありがとうございました。いただいた感想は、小嶌さんにお届けします)
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