インタヴューの相手は、アーティストでモデルのベラミー サヤさん。カナダ人で日本人。コドモでオトナ。よわくて強い。そんな境界線の上を歩きながら、自らの頭で考えたサヤさんの言葉は、人のこころを自由で健康にします。
「15歳の自分と今の自分が、ぜんぜん違う人のように感じる」。他人の目を気にしすぎていたサヤさんがどう変わっていったのか。全4回です。お楽しみください。
1998年カナダ、モントリオール生まれ。アーティスト。ライター。翻訳者。モデル。 15歳でモデル事務所に所属し、2016年で都内の高校を卒業。同時にモデル事務所をやめ、9月にトロント大学に入学したが、現在は大学生活再開に準備中。色々な仕事をしながら絵を描いている。
1987年埼玉県生まれ。The U 編集長。イラストレーター。1月15日から原宿の「ビオ オジヤン カフェ」で個展やってます。1年半海外を旅してた。
カナダと日本の狭間で
マスダ
はじめまして、よろしくお願いします。
サヤ
今日はありがとうございます。よろしくお願いします。
マスダ
日本には、いついらっしゃったんですか?
サヤ
カナダのトロントからちょっと離れた小さな町で生まれ育ったんですけど、はじめて日本に来たのは13歳でした。
マスダ
そのときの気持ちは?
サヤ
本当は、カナダで友だちができていて、日本に来たくなかったんですよ(笑)。でも、親の考えは、「ハーフなんだから両方経験したほうがいいよ」って。生まれたときから考えてくれていたみたいで。
今では「経験できてよかったなあ」って思ってるんですけど、最初はすごく辛かったですね。
マスダ
辛さっていうのは?
サヤ
日本でもカナダでも居場所がなかったんですよ。カナダで住んでいた小さな町は白人ばかりで、私ひとりポツンと日本人で。別に人種差別的な言葉を投げかけられたわけじゃないんですけど、「あなたは違うね」みたいな空気があって。
マスダ
空気感として違うものとして扱われていたんですね。
サヤ
だから、カナダでは「私は日本人だ」って誇りを持つことで自分を保ってたんです。13歳になって日本に来るのは、友だちと別れることになるし嫌だったんですけど、同時に楽しみな部分もあって。
やっと自分と同じような人と会えるのかなって。期待をしてたんですけど、日本に来て驚いたのが、空港や電車で、すごい顔を見られるんですね。びっくりして、「なんで?」って親に聞いてみたら、「外人だから。白人だから」って。ああ、こっちでも外人なのかって。
マスダ
うーん。
サヤ
両方の国の人なんだけど、どっちでもないって気がしたんです。そのときは辛かったんですけど、今は乗り越えました。
私は、すごく極端に受け入れてもらえない経験をしたんですけど、考えてみたら、みんなそういう経験ってしてるよなあって。わたしだけじゃなくて、日本人でも。
他の人の意見はコントロールできない
マスダ
どうやって乗り越えていったのかが気になります。
サヤ
アートと結びつくんですけど、自分に対する他の人の意見は自分自身でコントロールできないって気づいたんですね。もちろん、気分によってそういう風に考えられない日もあるんですけど。
でも基本的に、他の人の意見は自分の責任ではないって気づくことができて、もっと自由になったというか、表現豊かになりました。
マスダ
ああ、その考え方は、人を自由にしますね。
サヤ
絵を描きはじめた頃は、他の人の目を気にして、きれいに描かなければいけないんだって完璧主義だったんです。高校生の頃のアートを見ると、鉛筆でリアルな絵を描いてたんですね。
時間が経つにつれて、いろんな色をつかったり、顔の強調したい部分をビヨーンって伸ばしたり、自分の表現をしていいんだ。自分でいていいんだって考えられるようになったんです。
他の人のことを気にしないで、自分のやりたいことに集中すれば、自分を外から見てた自分が、魂みたいにヒュッと戻るみたいな(笑)。
マスダ
外にいたもう一人の自分がヒュッと入ってきたんですか(笑)。
サヤ
ごめんなさい、ヘンなこと言ってる(笑)。
たとえば、カメラを向けられると、モデルではない普通の人って緊張するじゃないですか。モデルでさえ最初はそうなんですけど、「自分、どういう風に見えるかなあ」って気にすると自分じゃなくなっちゃうんですよ。
モデルもやってるんですけど、最初はすごい嫌いだったんですよ。他の人に見られているって感覚が、強調されるというか。
マスダ
いちばん見られる仕事ですもんね。
サヤ
自分の写真が壁に貼ってあったら、世間の目に見られるじゃないですか。それが、もう嫌で。撮られた写真を見て「なんで私はこう見られるんだろう」って、ネガティヴな方向に考えちゃったんですけど、アートで、自分のやりたいように描けばいいんだって考えられるようになったら、モデルの仕事も気持ちがラクになりました。
前は他の人に好かれたくてしょうがなくて。
マスダ
好かれたかったんですか。
サヤ
はい、親にも好かれたくて。自分がやりたいからやっていたわけじゃなくて、こうしなくちゃいけないと思いながら、いろんなことをやってきてて。でも、「そうするべき」だと思ってたんです。
でも、みんなに好かれるなんて不可能じゃないですか。自分がやりたいように表現していれば、自然に自分のことをおもしろいと思ってくれる人が寄ってきてくれるって気づいたんですね。
マスダ
ああ、このインタヴューもそうですね。
サヤ
はい、自分の考え方、自分のスタイルに自信をもてるようになると、無理に好かれようとしなくても、いいんだって。
マスダ
ああ、向こうから来てくれるんですね。
サヤ
そのほうが精神的に健康だし。もっと意味のあるつながりができるようになりました。
15歳の自分と今の自分が、ぜんぜん違う人のように感じます(笑)。
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