「席を譲った人のおじぎ」好き。

「席を譲った人のおじぎ」好き。

好き。美しさを発見し、こころが向かうこと。

好きな、人、コト、物、カルチャー、場所、ムード・・・それは王道でも、ニッチでも。目に見えるものでも、見えないものでも。好きな理由を説明しやすいものでも、うまく説明できなくても。すべての「好き」って気持ちは、美しい。

ぼくは、人の「好き」と想う気持ちと、それに向かう姿が、好きです。あなたの、好きな人、コト、物、カルチャー、場所、ムードなどを教えてください。「好き」の気持ちを送ってください。すてきな投稿の「好き」をイラストに描いて、文章を「The U」でご紹介させていただきます。

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The U 好き。

と書いてはみたものの、これだけで「わかった、送ってみよー」とはならないですよね。いったい、どんなことをどれくらい書けばいいのかわからない。っということで、まずは、ぼくが好きなものを書いてみます。

「席を譲った人のおじぎ」好き。

電車の中で、見かけるとほっこりするやりとりがある。おじぎです。

いろんな国の電車に乗ったけど、他の国では見かけたことがない。他の国の人が席を譲らないわけではないんだけど、おじぎするのを見たことがない。席を譲った人がする、おじぎを。

席を譲った人がするおじぎが好きだ。そこには、ふたつの敬意がある。

たとえば、こんな電車の中でのやりとりを見たことはないですか?

1つの席が空いているときに、二人のため座らないで立っている人たちがいる。もう一つ席が空いたけど、空席と空席の間に人が座っている。そのとき、その間に座っている人が立っている二人に気がついて、席をひとつずれる。すると、それに気づいた二人が席をずれてくれた人におじぎをする。そして、席をずれた人も、おじぎをする。

ずれた人のやさしさがなければ、席を譲られた人の敬意はなかっただろう。席を譲られた人が意図的にずれたことに気がつかなかったら、決して譲った人の敬意も生まれなかっただろう。敬意に敬意が重なったときにだけ、この景色が見られる。

どうやらぼくは、敬意を見るのが好きなようだ。自分とは関係ない場所で起きていることでも。

カナダのバンクーバーでも、多くのバスの乗客が、大きな声で「Thank you」と運転手に言いながら、バスの真ん中にあるドアから降りていく姿を見て、うれしくなった。

コーカサス地方にあるアゼルバイジャンは、男性が女性に席を譲る文化がある。お年寄りの女性だけじゃなくて、若い女性にもだ。これは、おもしろい文化だなあと思いながら見ていて気がついたことがある。それは、男性が女性に席を譲ることが当たり前になりすぎているのか、多くの女性が男性に「ありがとう」と言っていないのだ。「ありがとう」どころか、おじぎも、うんともすんともないではないか。

敬意観察家のぼくにとっては、黙っちゃいられない。仲よくなったアゼルバイジャンの女性に聞いてみた。

「なんで、『ありがとう』って言わないの?」

「えっ?アンタ、なに言ってるの?わたしは『ありがとう』って、ちゃんと言ってるよ。わたしの眼で」

・・・この一言も大好きです。敬意はおじぎだけじゃないんだね。

「席を譲った人のおじぎ」が好きだと思ったかたは、あなたの好きを教えてくださいね。
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マスダヒロシ
マスダヒロシ

The U 編集長/グラフィックデザイナー/イラストレーター 1987年埼玉県生まれ。2017年から1年半世界76カ国を旅をして、当たり前は時代と場所でひょいっと変わることを知る。イラストのご依頼お待ちしております。Instagram @hiroshimasud