「かわいい」ということばがなくなったら、日本は静かになるだろう。人が「かわいい」と言うとき、そこには熱があって敬意がない。その結果、本気でかわいいと思うほど、「かわいい!」の声が大きくなる。
声の大きさだけじゃない。日本人は1日に「かわいい」と口にする回数も多いため、日本が静かになるなんて言ってみた。
「わたしの知ってる日本人の女性は、なにを見ても『かわいい』って言うんだよ」、フィンランドの友だちがぼくに言った。猫を見ては「かわいい」。食器を見ては「かわいい」。アクセサリーを見ては「かわいい」。
その話を聞いたとき、ことばのヴォキャブラリーの少なさを嘆いてしまった。その対象に対して「かわいい」以外にないのかなって。
でも、今はちょっとちがう気持ちでいる。「かわいい」と思えるものがたくさんあってよかった。「かわいい」ということばがあってよかったって。「かわいい」なにかが、人のこころをパッと明るくし、「かわいい!」ということばが、日本をグッと賑やかにしている。
そんな不思議なチカラのある「かわいい」って、どんなことなんだろうと考えてみたくなった。
ぼくなりの答えが出た。「かわいいは、抱きしめたい気持ち」を表している。かわいいの代表選手、赤ちゃんを見ていて、そんな風に思った。
犬を「かわいい」と言うとき、犬を抱きしめたい気持ちになっている。おじさんのぽっこりお腹を「かわいい」と言っている瞬間、ぽっこりお腹を抱きしめたいという気持ちになっている。
「かわいいは、抱きしめたい気持ち」って考えてみて、おもしろいことに気がついた。「かわいい」が溢れている日本が、他の国に比べて抱きしめることを得意としない国ということだ。ヨーロッパの国に行くと、街の中でもハグが当たり前に行われている。日本ではハグすることが照れくさい。
いや、まてよ、抱きしめることの少ない国だからこそ、「かわいい」ということばを用いて、日本人はなにかを抱きしめているのかもしれないね。
今日も読んでくれてありがとうございます。
ちなみに、「かっこいいは、抱きしめられたいという気持ち」。