ただただ好きで描くPaint Creator minami 前編

ただただ好きで描くPaint Creator minami 前編

はじめてのインタヴューのお相手は、Paint Creator minami(ミナミ)さん。インタヴュー前、ミナミさんを紹介してくださった方からは、千葉市美術館の「1986年 激動の時代の芸術」で、壁画を描いたアーティストであり放浪画家、とだけ聞いていました。

ミナミさんの壁画を観に行くと、高さは天井に届くほど、横幅も10メートル近くあり、ど迫力。その大きなキャンパスに描かれた抽象的な絵からは、ぷつぷつと湧きあがるいのちを感じる。

「これを描いた人は、どんな方なんだろう?」「放浪画家ってどんな人?」と思いながら、インタヴューにのぞみました。話を聞くと、作品と同じくらいチカラづよい言葉と生き方に出合いました。

前編、後編に分けてお届します。
後編/「なんとかなる、恥かいてもいい、バカになろう」

Paint Creator minami設計事務所に勤める傍ら、福岡を拠点に放浪と創作を続ける。その時、その場所で表現したいことを平面・立体に関わらず自分の思うベストな方法で。https://paintcreator-minami.work

マスダ ヒロシ1987年埼玉県生まれ。The U 編集長。グラフィックデザイナー。イラストレーター。2017年より1年半世界中を旅する。旅中、いろんな国の道で似顔絵を描いていた。

絵を描いてみたら、たのしくって

マスダ
はじめまして。よろしくお願いします。ミナミさんの壁画が展示されている「1968年 激動の時代の芸術」観てきましたよ。壁画もすばらしかったですが、横尾忠則さんや寺山修司さんなど、数々の大御所の描く絵と同じ場所に展示できるなんてすごいですね。

Paint Creator minami The U

ミナミ
すっごく、おもしろい展示ですよね。こんなにもディープでエネルギッシュな時代があったんだと改めて感じました。絵をはじめて5年ですが、いい巡り合わせがあって、あの場におじゃまさせていただきました。本当にありがたいことです。

マスダ
えっ、まだ5年なんですね。でもその前は美大などで絵を学んでいたんですか?

ミナミ
ぜんぜん(笑)。高校は工業高校でしたし、卒業してからは福岡にある設計事務所で、サラリーマンしてました。

マスダ
じゃあ、絵はまったくの我流ですか?

ミナミ
いちおう、デッサンを学んだほうがいいかなあと思って、デッサンの教室にいちど行ったんですが、自分の絵の原型がなくなるくらいにめちゃくちゃ修正されて、これはもういいかなって、1回で辞めました(笑)。

マスダ
そんなにですか(笑)。きっと、ミナミさんには必要なかったんですね。サラリーマンからアーティストになろうとしたきっかけは何だったんですか?

ミナミ
うーんと、墨絵を描いている西元祐貴さんが所属しているアーティスト事務所ジェニエット合同会社でスタッフをしていたんです。西元さんの描く姿をみていたら、わたしも絵を描きたいなあと思ったんです。そしたら、友だちが画材をくれて、絵を描いてみたら、たのしくって、たのしくって。

マスダ
わかります。絵を描くのって、たのしいですよね。時間を忘れるといいますか。

ミナミ
はい、絵を描いている理由をよく聞かれますが、「たのしいから、以上」って感じです。たのしい以外の理由はないですね。ノートはいつも落書きだらけって感じでしたし。それで、絵を描く時間がもっともっとほしくなって、設計事務所の仕事を正社員から契約社員にしてもらいました。

マスダ
お仕事を辞める選択はしなかったんですね。

ミナミ
ありがたいことに辞めないでほしいと言われたのと、辞めてバイトをいちから探すのもたいへんですしね。勝手もわかっていたので、やることをやりながら、絵を描いていました。じつは、今も絵を描きながら、同じ設計事務所に所属しています。長期の休みもいただけて、ほんとうに懐の深い会社なんです。

マスダ
いやあ、いい会社だなあ。そのあとは、どういう道のりを辿っていったんですか?

ニューヨークで笑顔をもらう

ミナミ
絵を描くなら、やっぱりニューヨークだろうと、契約社員として働いた1年後にニューヨークに行きました。ニューヨークって、ほんとうに道を歩きながら、リンゴを囓っている人がいるんですよ。電車の中とか、いろんな場所で気になる人やモノをすべて、スケッチをとっていました。カフェでは、こんな絵を描いていたんです。

カフェのインテリアや小物や店員さんを、組み合わせて描きました。

マスダ
かわいい。カフェの絵を描こうとしたのも、ユニークですね。はじまりは、どんなかたちだったんですか?

ミナミ
いつものようにニューヨークのカフェで気になるものをスケッチしていたら、そこで働いている店員さんが「なに描いているの?」って、話しかけてくれたんです。それで、描いていたものを見せたら、すっごく喜んでくれて。絵がきっかけで笑顔になってくれるんだって思って、そのあとはカフェに行くたびに、描いていました。今では、きれいな紙に描いていますけど、はじめはいらない紙の裏側に描いていたんです。

Paint Creator minami The U

マスダ
ぼくも、旅をしながら道で似顔絵を描いていましたが、すっごく喜んでくれますよね。

ミナミ
絵は言葉がなくても通じるし、自分の描いた絵を喜んでもらえるって、単純にうれしい。ニューヨークには6ヶ月間いたんですが、シェアメイトにも恵まれていたし、インターンをしていたギャラリーで個展をしたり、ストリートのアーティスト達を集めてグループ展なんかもしたり、いい経験になりました。

マスダ
ニューヨークのあとは日本へ?

ミナミ
ニューヨークのあとは、いくつかの国に行って、日本に帰りました。お金も底をついていたので、もともといた会社に契約社員として戻りました。それが、、、

マスダ
が?

ミナミ
ほんとうに(会社に)申し訳ないんですが、その3ヶ月後には京都へ、、、

マスダ
忙しい(笑)

ミナミ
旅行で京都にいたとき、いつものようにカフェのスケッチをしたら、カフェのオーナーさんから「おもしろいね、うちに来なよ」と声をかけてもらって。「じゃあ、行きます」って。

マスダ
いやあ、いい意味で軽いなあ(笑)。

ミナミ
3ヶ月間の契約で、カフェ店員として京都で働いていました。そのお店には海外からの研修などもあるためゲストルームがあったんです。なのでそこに住んでいました。

マスダ
心配はなかったんですか?

ミナミ
まあ、日本だし、大丈夫だろうって(笑)。

マスダ
つ、つよい。さすがニューヨークで揉まれただけありますね。

後編/「なんとかなる、恥かいてもいい、バカになろう」Paint Creator minami

福岡で個展のお知らせ

minami 2nd EXHIBITION
『点と線は流点する』〜ニューヨークから千葉、ヤツオまで〜
2018年11月21日(水)〜11月26日(月)
THRUSH CAFE 福岡市中央区平尾3-5-10ビュートリアム2F
https://paintcreator-minami.work

後編/「なんとかなる、恥かいてもいい、バカになろう」

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マスダヒロシ
マスダヒロシ

The U 編集長/グラフィックデザイナー/イラストレーター 1987年埼玉県生まれ。2017年から1年半世界76カ国を旅をして、当たり前は時代と場所でひょいっと変わることを知る。イラストのご依頼お待ちしております。Instagram @hiroshimasud